江戸時代の生活はとても質素でつつましいものでした
江戸時代の生活については、さまざまな史料が残されています。
各地の博物館や郷土資料館には江戸時代の衣装が展示されていますし、錦絵や浮世絵などにも当時のあでやかな生活ぶりが描かれていますので、そうしたものからある程度知ることができます。
しかし、残されている史料からわかるのは、あくまでも上流階級の生活であり、よそいきの服装やごちそうであることに注意すべきでしょう。
江戸時代の生活者の大半は庶民(町人)であり、決して豊かに暮らしていたわけではありません。
日常は、質素な衣類を身にまとい、貧しい食生活をしていたはずです。
しかし、そうした貧しい人々が使っていた物はあまり残っていませんので、各種の資料から想像するしかないのが実態です。
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衣類はリサイクルが基本でした
江戸時代には大型の機械を使って衣類を製造する工場などありません。
身につける衣類はすべて機織り機などでつくった手作りのものです。
たくさん作ることはできませんので、当然ながら高価でした。
そのため、一般の庶民(町人)が新品の衣類を購入するということはほとんどありませんでした。
大名や豪商、名主階級などは豪華な新品の衣装を買っていたのでしょうけれど、普通の家庭では、古着屋で買うのが一般的だったようです。
古着をつぎはぎして大事に扱い、毎日同じものを着ていた場合が多かったようです。
すり切れて穴が開けば当て布をして補い、それを何度も繰りかえして着られなくなれば、赤ん坊のおしめや雑巾にし、それがすり減って糸くずだけになるほどまで使い切ったと考えられます。
それゆえ、こうした庶民の着ていた衣類は現物が残っていないのでしょう。
もちろん、庶民の衣服は派手な錦絵や浮世絵に描かれるわけではありませんので、わずかな資料から推測するしかありませんが、実態はとことんリサイクル、というスタイルだったようです。
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食事はまことに質素でした
江戸時代の食生活について、多彩なものを食べていたとか、なかなかのグルメだったというようなことが言われることがありますが、それはあくまでも、お金持ちの人たちの食事ということです。
わが国には古くから素晴らしい食文化がありますし、和食は世界に誇れる世界遺産でもあります。
しかし、実際にそれを食していたのは一部の富裕層だったことは知っておくべきでしょう。
食卓に「おかず」が並ぶことは珍しく、下級武士の場合で魚を食べるのは月に数回程度でした。
朝ごはんはみそ汁だけ、昼は豆腐だけ、夜は油揚げだけというような食事が普通です。
貧しい農家の場合には、米を食べることはめったになく、いもや麦、ひえなどを主食にしていました。かなり貧しい食生活だったようです。
裏長屋暮らしが一般的でした
江戸時代の庶民は長屋暮らしが当たり前でした。長屋以外に暮らす人はほとんどいなかったと考えて良いでしょう。
長屋といっても、現代のアパートのようなものを想像してはいけません。隣の部屋とは薄い板張りの壁があるだけですので、防音などまったくありません。
隣家で食事をする音も、性生活をする音も筒抜けでした。
トイレは共同便所ですし、井戸や洗い場もみんなで一緒に使っていました。
夏には蚊が来襲し、すき間風を防げない建物では真冬は相当な寒さだったことでしょう。
現代であればいかに質素なアパートでも電化製品の恩恵を受けることができるので、当時と比べればだいぶ快適に暮らせるのではないでしょうか。
歌舞伎や能などの娯楽も、一般の町民にとってはぜいたくな行事です。
生涯に一度も見たことがないという人も少なくなかったことでしょう。
みじめで厳しい生活のようにも思われますが、それが「当たり前」になっている世界で暮らしていれば、それほどひどくは感じられなかったはずです。
現代人の暮らしも、100年後、200年後の未来人から見れば、ヒドイ暮らしぶりに見えるのかも知れません。
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