大名行列の前で町人が土下座をする時代劇のシーンはウソ!?
「下にい〜下にい」という掛け声とともに大名行列が来ると、町人や農民は土下座をして見送るというシーンが時代劇などでよく見られます。
しかし、実際に大名行列が通過するのを一般庶民が土下座して見送るということはなく、普通に立ったまま、まるでパレードでも見るかのように楽しんでいたというのが真実のようです。
また「下にい、下にい」という掛け声も、一般の大名行列では使われることはなかったのです。
そういった意味では、時代劇に出てくる大名行列のシーンの多くは間違いだと言えるでしょう。
大名行列を見物するのは一般庶民の娯楽
一般庶民が土下座をしなければならなかった大名行列というのは、実は将軍家と御三家の紀伊徳川家、尾張徳川家に限られていました。
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これらの行列が通る時には「下にい〜下にい」という掛け声で、一般庶民に土下座を強要したわけです。
それ以外の、一般の大名の場合には「避けい、避けい」とか「片寄れい、片寄れい」といった掛け声が普通で、要するに道を開けろということを強要しているわけです。
いかなる場合であっても、大名行列を横切るという行為は御法度であったために、一般庶民は道をあけて傍らで立ったまま大名行列を見物していたのです。
実際に、安藤広重などが書いた絵の中に、娯楽のように大名行列を見物している庶民の姿が書かれたものがあります。
まさに、現代風にいえばパレードを見物する観客のようなものかも知れません。
見物人がいるとなれば、見られる方もそれなりに気合が入るのか、大名行列もどんどん派手になり、やがてそのことが財政圧迫につながっていきます。
八代将軍吉宗が武家諸法度の中で大名行列に人数制限をかけることになったのは、そういった理由があったからです。
将軍家と御三家だけに土下座する理由
では、なぜ将軍家と御三家にだけ土下座をして、一般の大名には土下座をする必要がなかったのでしょうか?
江戸時代を支配していたのは徳川幕府ですから、支配される側の一般庶民は将軍家や将軍の跡目を継ぐ可能性のある御三家に対して土下座をするのは当然でした。
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しかし、一般の大名と一般庶民の間には直接的な関係はなく、徳川幕府に支配されているという点で見ればむしろ同格なわけです。
そのため、通行の邪魔さえしなければ普通に立ったまま大名行列を見物しても無礼には当たらなかったわけです。
ですから、よく時代劇などで将軍家でもなければ御三家でもない大名行列に町民や農民が土下座をしているシーンは大きな間違いということになります。
参勤交代はすべての大名が行ったわけではない
江戸時代にはすべての大名が参勤交代を義務付けられていたと思っている人が多いですが、実際には参勤交代を免除されていた大名も少なからずいました。
老中や若年寄などのように幕府の要職にある大名は、参勤交代をする必要がありませんでし、江戸に常駐している御三家の水戸徳川家なども免除されていました。
また、江戸中期以降に分家によって大名となった小国の大名なども、参勤交代を免れていました。
もともと参勤交代には、幕府に反旗をひるがえす可能性のある外様大名の経済力を奪う目的があったわけです。
江戸に常駐するいわゆる身内や、幕府に反旗をひるがえすだけの体力のない大名に参勤交代を義務付けてもあまり意味がないと考えたのかも知れません。
ちなみに、参勤交代の「参勤」は江戸に向かうことを言い、「交代」は江戸から国へ帰ることをいいました。
ですから「参勤交代で江戸に向かう」という表現は間違いで、正しくは「参勤で江戸に向かう」という表現が正しいということになります。
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